建築物に害を及ぼすのは、おもにヤマトシロアリとイエシロアリです。
ヤマトシロアリは北海道北部を除く日本全土に、イエシロアリは神奈川県以西の海岸線に沿った温暖な地域と千葉県の一部、それに南西諸島、小笠原諸島に分布しています。
イエシロアリは千葉県以西の温暖な海岸線に沿った地域に散発的に発生います。
そのほか、沖縄県ではダイコクシロアリの被害が増えてきています。
鹿児島県ではその殆どがイエシロアリの被害です。
項目 | ヤマトシロアリ | イエシロアリ |
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特徴 | 兵隊アリは、頭部が前後に長く、大顎は鋭く鋏状に発達し、有翅虫が胸が淡黄白であるが、他の大部分は黒褐色、、羽アリは羽根が薄く黒い色をしている。 | 兵隊アリは、頭部が卵円型で、刺激を与えると乳白色の液体を出し、有翅虫が頭が褐色であるが、他の大部分は黄褐色、羽アリは薄褐色または黄白色に見えます。 |
体長 | 4-9mm | 7-9mm |
生態 | 集団を成して枯れ木や朽ち木を食べ、その内部に巣を作る。特に湿った材を好む。巣は材の中に網目状に掘られた巣穴からなり、材の外に巣穴を続ける事もあるが、イエシロアリのように大規模に食害する事はまず無い。 | 地下に穴を掘り、木くずや土でかためられた大きな巣を作り、この中に女王がいる。この巣を中心にしてトンネルを掘り、あちこちを食うので木造家屋などでは大きな被害が出る。 |
女王・王 | 大型のものは体長5cmほどで1日に5万個の卵を産むものもあり、交尾・産卵を繰り返す事で子孫を増やします。 |
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副女王・副王 | 女王や王が死んだり、傷ついた時に王となる階級です。また、巣が大きくなると王や女王として働く場合もあります。 |
働きアリ | 最も個体数の多い階級で全体の9割を占めます。巣(蟻塚)の修復や食料集め、子の世話を担当する。 |
兵隊アリ | 大きな頭と牙状の大あごを持ち、巣に敵が侵入してくるのを防ぎます |
シロアリ防除の方法について
シロアリ防除には、建築物の新築時に行う予防処理と既存建築物に対して行う処理があります。 新築時に行う処理は、シロアリの被害と腐朽を予防する事を目的とし、既存建築物の処理は建築物を食害しているシロアリを駆除し今後の蟻害を予防する場合と、蟻害は無いが予防の為に行う場合とがあります。 シロアリ防除処理は、当協会に登録された者が認定薬剤を用い、防除施工標準仕様書及び安全管理基準に基づいて処理を行うようになっています。防除処理には土壌処理と木部処理があり、その両方を行うことになっており、防除施工標準仕様書では五年を目途に再処理をするとしています。
土壌処理とは
ヤマトシロアリやイエシロアリは、一般に地中を通って建物内に侵入してくることが多いので、建物の基礎の内側や束石の周囲、その他シロアリが通過する恐れのある土壌を薬剤で処理することが、シロアリの侵入を防止する最も効果的な方法になります。通常は、土壌表面に薬剤を散布し防蟻層を形成します。最近では、防蟻効果の他に土壌からの水分蒸散防止を目的とした土壌被膜形成工法やシート工法も採用されています
木部処理とは
木部処理は、木材表面に薬剤を噴霧器を用いて吹き付け処理するか、又は刷毛等で塗布する方法と、木材や壁体に穿孔して薬液を注入する方法があります。新築建物の木部処理は、通常、地面から1mまでの部材、浴室回り部材、洗面所や台所等の水回り部分の木材を処理します。また,木口、切り欠き、ボルト穴、仕口、接合部、コンクリート接触面等は特に入念な処理が必要です。
維持管理型シロアリ防除システム
ベイト工法
ベイト工法と言う名称は、シロアリの駆除剤を混入した餌(ベイト剤)をシロアリに摂食させて、シロアリの集団を死滅させるシステムに対して(社)日本しろあり対策協会が付けた名称です。
ベイト工法のコンセプトはIPM(総合的害虫管理)の理念に沿ったもので、レスケミカル(少量 の薬剤)によって薬剤の環境負荷を低減するシステムです。この工法は、従来工法の約千分の一という少量 の薬剤を使い、しかも、その薬剤が環境へ流失しない閉鎖系のシステムです。
ベイト工法は、予めシロアリの好む餌(薬剤は入っていない)を入れたモニタリングステーションを地面 に埋設し、シロアリを発見したときにベイト剤をセットする方法と、ベイト剤を入れたベイト・ステーションをシロアリが生息している箇所に限定的に設置する方法とがあります。
物理的工法
物理的工法は薬剤を全く使わないでシロアリの進入を阻止する工法で、古来「アリ返し」として土台の下に金属板を敷く方法等がありました。 最近オーストラリアで開発された工法は、網の目がシロアリが通 り抜けられない大きさに設計されているステンレス・スチール製の金網を建物の下部へ敷いて地中からのシロアリの進入を阻止する方法です。
他の一つはアメリカで開発された工法で、細かい砂粒を床下の地面 に約10cmの厚さに敷き詰めてその上にコンクリートスラブを打設する工法です。この砂粒は岩石を砕いた物で、シロアリの大顎でくわえられない大きさにサイズをそろえたものです。
ステンレス・スチール製の金網はオーストラリアや米国の一部、砂粒は米国で採用されています。何れの工法も日本に生息するシロアリの種と日本の建築様式に適合するかを検討しています。
木材の防腐について
木材は、シロアリなど昆虫の食害を受けるだけでなく、微生物、特に木材腐朽菌(ワタグサレタケ、カワラタケ、ナミダタケなどの菌類、いわゆるキノコの類、専門的には担子菌といいます)によって分解されます。つまり腐朽する(腐る)のです。シロアリの被害を受けやすい場所は、一般 的にこれら腐朽菌の被害を受けやすい場所でもあります。その理由は、これらのキノコ類が繁殖するために必要な、水分、養分あるいは温度がほぼ共通 しているからです。 したがってシロアリが生息する地域では、防蟻処理と防腐処理を同時に行う必要があります。また、シロアリのいない地域でも、適当な条件が整うと木材が腐ります。 そのため、建築物を木材防腐薬剤によって処理する必要があります。 薬品による防腐処理に頼らず、木材が常に乾燥状態に置かれるようにして腐朽を防止する工法も取り入られつつありますが、結露の発生、雨水の浸入、あるいは配管からの漏水など、木材以外の材料の劣化や施工の不備などから生ずる事故に備えるために、防腐処理を欠かすことができません。これは、耐震性など建築物の初期性能を維持するためにも重要なことです。